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各種手続き及び届出

自家用電気工作物を新設する場合

自家用電気工作物を新設する場合には、国への各種手続きが必要となります。電気事業法に基づく主要な手続きは、以下の2点です。

  • 設置者は「保安規程」を定め、国に届け出ること
  • 設置者は「電気主任技術者」を選任し、国に届け出ること

手続き上、必要となる書類は「保安規程届出書」「保安規程」「電気主任技術者関係書類」「工事計画届出書」です。以下に、詳細を記します。

保安規程に定めなければならない項目

まず、保安規程には以下の項目を具体的に定める必要があります。(規則第50条)

  • 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること
  • 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に従事する者に対する保安教育に関すること
  • 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安のための巡視・点検及び検査に関すること
  • 自家用電気工作物の運転又は操作に関すること
  • 災害その他非常の場合にとるべき措置に関すること
  • 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安についての記録に関すること
  • その他、自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関し必要な事項

これらを盛り込んだ保安規程は、決められた様式に従い「保安規程届出書」により国(産業保安監督部長又は経済産業大臣)に届け出なければなりません。

電気主任技術者の選任について

電気事業法第43条では「設置者は自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任しなければならない。」と規定しています。このため、設置者は自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を監督させるために、電気主任技術者を選任し、国に届け出る義務があります。
そして自家用電気工作物の工事、維持及び運用に従事する者は、保安のために電気主任技術者が行う指示に従わなければなりません。設置者は設備または事業所ごとに電気主任技術者を選任しなければなりません。

電気主任技術者の選任方法

選任にはいくつかの方法があります。

  • 有資格者選任(電気事業法第43条第1項及び第3項による)

    電気主任技術者免状の交付を受けている者を電気主任技術者として選任すること。「主任技術者選任又は解任届出書」により、国(産業保安監督部長又は経済産業大臣)に届け出ます。

  • 有資格者以外の選任(電気事業法第43条第2項による)

    電気主任技術者免状の交付は受けていないが、電気設備に関して一定の知識・技能を有する者(電気工事士免状の交付者、工業高校の電気科で規定の科目を修めて卒業した者など)を電気主任技術者として選任すること。「主任技術者選任許可申請書」により、国(産業保安監督部長又は経済産業大臣)の許可を得る必要があります。

  • 兼任(電気事業法施行規則第52条第3項ただし書きによる)

    設置者が既にある自家用電気工作物の事業場の電気主任技術者として選任している者を別の自家用電気工作物の電気主任技術者として兼任させること。「主任技術者兼任承認申請書」により、国(産業保安監督部長又は経済産業大臣)の承認を得る必要があります。

有資格者選任、有資格者選任以外、兼任に際して、ビル管理会社の社員から電気主任技術者を選任する場合は、設置者とビル管理会社間の設備総合管理委託契約書(写し)の添付が必要となります。

  • 外部委託(電気事業法施行規則第52条第2項による保安管理業務)

    電気設備保安業務を専門に行っている個人事業者の電気管理技術者、または電気保安法人(関東電気保安協会など、電気設備の保安業務を行う法人)に保安業務を委託すること。「保安管理業務外部委託承認申請書」により、国(産業保安監督部長又は経済産業大臣)の承認を得る必要があります。

工事計画の届出

電気事業法第47条では、公共の安全の確保上特に重要なものとして主務省令で定めるものを工事しようとする者は、その工事の計画について経済産業大臣の認可を受けなければならないことが規定されており、同法第48条に工事着工の30日前までに「工事計画届出書」の届出が必要であることが規定されています。新設時に工事計画の届出が必要な工事は次のとおりです。

  • 受電電圧1万V以上の需要設備の新設工事
  • ばい煙(騒音・振動)発生施設に該当する自家用電気工作物の新設の工事
  • 電気事業法施行規則別表第2に規定する発電所の新設工事
使用前自己確認結果の届出

電気事業法第51条の2では、公共の安全の確保上特に重要なものとして主務省令で定めるものを設置する者は、使用開始前に技術基準に適合することを自ら確認しなければならないことが規定されており、同条第3項で使用開始前までに「使用前自己確認結果届出書」の届出が必要であることが規定されています。
使用前自己確認結果の届出が必要な設備は次のとおりです。

  • 出力500kW以上2,000kW未満の燃料電池発電所であって、単機出力が500kWの発電設備を組み合わせる設備

また、出力500kW以上の水力発電設備の洪水吐きゲート用予備動力設備を設置又は取替えた場合においても、使用前自己確認及び結果の届出が必要になります。

自家用電気工作物について変更があった場合

自家用電気工作物について変更があった場合は、保安規程の記載内容等を変更して届け出なければなりません。手続き上、必要となる書類は「保安規程変更届出書」などです。以下に、詳細を記します。

  • 設置者の社名、所在地、代表者氏名、事業場名を変更した場合

    設置者の社名、事業場名、組織、使用区域、点検項目などを変更した場合は、「保安規程変更届出書」の提出が必要となります。必要に応じて、新旧の組織図、使用区域図など、変更の内容が分かるものを添付します。保安規程の全条文変更など、大幅に変更のあった場合には、保安規程を添付して提出します。
    ばい煙(騒音・振動)発生施設がある施設で社名、事業場名などを変更した場合には、「ばい煙(騒音・振動)発生施設に関する変更届出書」が必要になります。また、PCB含有の電気工作物を現に設置、または予備として有している施設で変更があった場合にも、「PCB含有電気工作物変更届出書」の提出が必要となります。

  • 電気主任技術者を変更した場合

    電気主任技術者を変更した場合には「電気主任技術者選任又は解任届出書」が必要となります。電気主任技術者の選任と同様の手続き、届出が必要です。電気主任技術者の選任形態を変更した場合には、「保安規程変更届出書」の提出が必要です。

  • 変更工事を行う場合

    既設の自家用電気工作物の変更工事を行う場合は、新設工事の際と同様に工事着工30日前までに「工事計画届出書」の提出が必要です。届出の提出が必要となる工事は以下の通りです。

    • 受電電圧1万Ⅴ以上の需要設備の受電用遮断器の設置
    • 電圧1万Ⅴ以上、容量1万kVA以上の変圧器の設置
    • 電圧1万Ⅴ以上、容量1万kVA以上の変圧器に冷却装置を取り付け、又は取り外して容量を20%以上変更するもの
    • 電圧5万Ⅴ以上の電線路の設置
    • 電気事業法施行規則別表第2に規定する発電所の変更工事

自家用電気工作物を譲り受けた(借り受けた)場合

「保安規程届出書」「保安規程」「電気主任技術者関係書類」が必要になります。電気主任技術者関係書類については、有資格者選任、有資格者選任以外、兼任、外部委託それぞれのケースに応じて新設時と同様の書類が必要になります。
電気事業法第48条第1項の規定による届出に係る自家用電気工作物を他から譲り受け、または借り受けて使用する場合には「自家用電気工作物使用開始届出書」を提出しなければなりません。

自家用電気工作物を廃止した場合

当該の自家用電気工作物を廃止する場合は、「需要設備の廃止報告書」の提出が必要になります。「電気主任技術者選任又は解任届出書」は不要です。ばい煙(騒音・振動)発生施設の廃止に際しては、「ばい煙(騒音・振動)発生施設廃止報告書」が必要になります。

合併・分割によって自家用電気工作物の設置者の地位を継承した場合

合併または分割によって自家用電気工作物を設置する者の地位を継承した法人は、「事業用電気工作物設置者地位承継届出書」の提出が必要となります。設置者が個人の場合は設置者相続証明書及び戸籍謄本を、設置者が法人の場合は存続する法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を添付して提出します。

建設現場で自家用電気工作物を使用する場合

建設現場などで使用される可搬型の発電設備などの電気設備の中には、自家用電気工作物として電気事業法の規制を受け、国への手続きが必要になるものもあります。
これらについては、自家用電気工作物の新設時の手続きと同様です。必要となる書類は「保安規程届出書」「保安規程」「電気主任技術者関係書類」「工事計画届出書」です。以下に、詳細を記します。

電気事業法で定められた自家用電気工作物

電気事業法第38条で規定された自家用電気工作物には、以下のものが該当します。

  • 電力会社等から600Ⅴを超える電圧で受電して電気を使用する設備
  • 発電設備とその発電した電気を使用する設備(出力50kW未満の太陽電池発電設備、出力20kW未満の風力発電設備、出力20kW未満の水力発電設備、出力10kW未満の内燃力を原動力とする火力発電設備、出力10kW未満の燃料電池発電設備などの小出力発電設備を除く)
  • 電力会社等からの受電のための電線路以外に構外にわたる電線路を有する電気設備

このため、建設現場で使用される可搬型の発電設備などの電気設備も上記に該当するものは電気工作物として、電気事業法の規制を受けることになります。
同様に、設置者は可搬型の電気設備についても「保安規程」を定め国に届けること、「電気主任技術者」を選任し国に届け出ることが必要となり、自家用電気工作物の新設時と同様の手続きが必要となります。

移動用電気工作物で自家用電気工作物に該当する場合の取り扱いについて

建設現場などで使用される移動用電気工作物についても、電気事業法第38条で規定された自家用電気工作物に該当するものには、同様の規制が適用されます。したがって、自家用電気工作物の新設時の手続きと同様に、「保安規程届出書」「保安規程」「電気主任技術者関係書類」「工事計画届出書」が必要になります。

移動用電気工作物とは、移動用発電設備、非自船舶用電気設備、移動用変電設備、移動用予備変圧器をいいます。
このうち移動用発電設備は、発電その他の発電機器並びにその発電機と一体となって発電の用に供される原動力設備及び電気設備の総合体であって、貨物自動車等に設置されるもの、または貨物自動車等で移設して使用することを目的とする発電設備をいいます。
これらのうち、電気事業法第38条で自家用電気工作物に該当するものについては、自家用電気工作物の新設時と同様の手続きが必要です。

自家用電気工作物で電気事故が発生した場合

自家用電気工作物で電気事故が発生した場合は、電気関係報告規則第3条により、報告が義務付けられています。ここでは、設置者が報告すべき電気事故の内容、報告の方式、報告期限、報告先を規定しています。

電気事故の内容

電気事故の内容は以下の通りです。

  • 感電又は破損事故若しくは電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより人が死傷した事故(治療のため入院した場合に限る)
  • 電気火災事故(工作物にあっては、その半焼(20%以上)の場合に限る)
  • 他の物件に損傷を与え、機能の全部又は一部を損なわせた事故
  • 主要電気工作物破損事故
  • 7日間以上の発電支障事故(発電所出力10万kW以上に限る)
  • 電気事業者に供給支障を発生させた事故(波及事故)
  • ダムによって貯留された流水が当該ダムの洪水吐きから異常に放流された
  • 社会的に影響を及ぼした事故

電気事故の報告は、速報と詳報の報告が義務付けられており、その報告様式も電気関係報告規則第3条第3項により定められています。
速報では、事故の発生日時、発生場所、事故が発生した電気工作物、事故発生の原因、事故の概要について、事故発生を知った時から24時間以内に、電話、FAXにより産業保安監督部長宛に報告します。
詳報では、事故原因の分析、事故の状況、被害の状況、再発防止対策等にわたって詳細に調査検討し、その結果を報告書としてとりまとめ、事故発生を知った時から30日以内に、産業保安監督部長宛に報告します。

ばい煙(振動・騒音)発生施設、ばい煙処理施設を建設、譲り受けた、又は廃止する場合

非常用予備発電装置等でばい煙、騒音、振動等が発生するものについては、公害防止の観点からこれらについての「工事計画届出書」を産業保安監督部に提出する必要があります(電気事業法第48条)。
届出書には、「公害の防止に関する工事計画書」「ばい煙に関する説明書」が盛り込まれます。
工事計画書では、事業場の名称、住所をはじめ、ばい煙発生施設の種類や能力、使用する燃料、ばい煙処理施設の処理能力、騒音及び振動発生施設の概要等を明記します。
説明書では、ばい煙発生施設の概要(型式、能力、出力、着工・使用年月等)、連続運転時の使用方法(排出基準、使用燃料、排煙条件、排出ばい煙の濃度等)、ばい煙処理の方法、添付図面等を明記します。
ばい煙(騒音・振動)発生施設の新設の場合には、自家用電気工作物の新設時と同様の手続きが必要となるため、電気事業法第48条第2項に基づき工事の着工30日前までに「工事計画届出書」を提出しなければなりません。
また、ばい煙発生施設に関する変更があった場合は、電気関係報告規則第4条第16号の規定に基づき「ばい煙発生施設に関する変更届出書」を産業保安監督部に提出します。代表者名、事業者、仕様等の変更箇所について明記して提出します。
このほか、ばい煙発生施設を廃止する場合には、電気関係報告規則第4条の規定により「ばい煙発生施設廃止報告書」を産業保安監督部に提出することが必要です。

PCBを含有した電気工作物に関する届出について

PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有した電気工作物については、電気関係報告規則の一部改正により、PCB電気工作物の使用及び廃止に係る届出制度が創設されました。
PCB含有の絶縁油を使用したトランスやコンデンサは、電路に施設してから相当程度経過しているため、経年劣化による電気工作物の損壊及びこれによるPCB含有絶縁油の漏洩の可能性が高まっていることが懸念されました。
これを防止するため、電気事業法及び電気関係報告規則の一部改正が行われ、PCB電気工作物の使用、廃止の届出制度が創設され、平成13(2001)年10月15日付で施行されました。この制度により、PCB電気工作物の使用状況を適切に把握し、必要により立入検査を行うなどの体制を整備しました。

規制の対象となる機器

この制度の対象となる機器は以下の通りです。

変圧器 電力用コンデンサ 計器用変成器 リアクトル 放電コイル 電圧調整器
整流器 開閉器 遮断器 中性点抵抗器 避雷器 OFケーブル

届出の対象となるのは上記に掲げる電気工作物で、あらかじめ掲げられた電気工作物の種類、製造者ごとに示される表示記号と一致した場合のほか、それ以外にPCB含有の絶縁油を使用していることが判明したものが対象となります。
上記のPCB電気工作物を現に設置している又は予備として所有している自家用電気工作物設置者は、設置又は保管場所を管轄する産業保安監督部長に「使用届出」を届け出ることが必要です。
ここには、設置者の氏名及び住所、事業場の名称及び所在地、当該電気工作物の種類、定格、製造者名、型式、製造年月、設置年月、当該電気工作物の使用状況を記載します。
また、自家用電気工作物設置者は前述の届出を行ったもののうち、設置者の氏名及び住所、事業場の名称及び所在地、当該電気工作物の使用状況について変更があった場合には、変更に係る事項について産業保安監督部長に「変更届出」を報告することが必要です。
さらに、設置または予備として所有しているPCB電気工作物を廃止した自家用電気工作物設置者は、産業保安監督部長に、設置者の氏名及び住所、事業場の名称及び所在地、当該電気工作物の種類、定格、製造者名、型式、製造年月、設置年月、当該電気工作物の廃止年月、廃止理由及び内容を記載した「廃止届出」(電気関係報告規則第4条の表中第17号の2)を届け出ることが必要です。
このほか、自家用電気工作物の破損その他の事故が発生し、PCB含有絶縁油が構内以外に排出された、又は地下に浸透した場合、産業保安監督部長に「電気工作物の絶縁油漏洩に係る事故届出」を届け出ることが必要です。

PCB使用、廃止届出制度は電気事業法第106条に基づく制度で、報告を怠ったり虚偽の報告を行った場合は罰則の対象となります。また、PCB電気工作物を使用する設備等を売買により譲渡した場合、譲渡した者は「廃止届出」を、譲渡された者は「使用届出」が必要となります。
合併等により事業の継承があった場合は、電気事業法第55条第2項に基づく継承の手続きを行うことになります。
このほか、PCB電気工作物が廃棄物となった場合には、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特別措置法)等の法令に基づく都道府県等への手続きも必要となります。